負担の公平性への疑問

 総務省の「家計調査年報」によりますと、日本人の年間の世帯収入は300万円未満の世帯が33%、400万円未満の世帯は47%との調査結果があります。その一方で、平成28年に年収が1億円を超えている日本人の数は20,501人おられるとのことです。日本の総就労者数は約6、550万人ですから、年収1億円超の方々は約0・03%程ですが、年収100億円超の方は17人おられます。
 日本は今から7年後の2025年、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類がかつて経験したことのない「超高齢社会」を迎えますが、この社会を支えるには巨額な財源が必要となります。そして、社会保障はみんなで支え合うものですから、これは国民がより公平に応分の税負担をしなければならないでしょう。もちろん負担をお願いする前に大胆な行財政改革をするのが手順ではありますが。
 本来、税は各人の能力に応じて平等に負担されるべきという「応能負担原則」が税法上などで原則とされており、 この考えは憲法13条、14条、25条、29条から導かれる「負担公平原則」でもあります。しかしながら現実はどうでしょうか。日本の所得税率は、所得が高ければ高い程払わなければならないという「累進性」になっており、その税率は5%から45%まで7段階です。
 しかし平成25年の資料によれば、所得税負担率は年間所得1億円までは累進性を維持していますが、1億円を超えると逆に累進性はどんどん低くなります。たとえば、年間所得が500万円の人の所得税率は4.9%、同様に1,000万円の人の所得税率は10.8%、5,000万円の人は25.7%、年間所得が5,000万円の人の倍ですが、1億円の人は27.5%、そして年間所得が100億円を超える人の所得税率は11.1%で、その税率は年間所得1,000万円の人の所得税率10.8%とさほど変わりません。1,000万円の所得と100億円の所得では1,000倍の開きがあるのに、所得税率はさほど変わらないというのはおかしくないでしょうか。また違う機会にご報告しますが、社会保険料負担率も高額所得者と低所得者とでは雲泥の差があります。
 2025年の「超高齢社会」に向け、その備えは急がなければなりません。そして私は、社会保障と税財源の問題を考える上で、高額所得者にも相応の負担を求めるべきだと考えます。それが税における「応能負担原則」「負担公平原則」に合致するものであり、「格差是正」に繋がるものだと考えます。

平成30年11月4日       野田たけひこ