近年、気候変動により、台風が大型化、豪雨が頻発化しています。それに伴い土砂災害などの被害が全国で発生しています。今年の8月20日に広島市で起きた土砂災害では、74人もの尊い命が失われました。国は平成11年6月29日、広島県北部で発生し、死者・行方不明者32人を出した豪雨による土砂災害を契機に、土砂災害のおそれのある土地の区域における警戒避難体制の整備や一定の開発行為の制限等を行うことにより、土砂災害から国民の生命及び身体を保護することを目的に平成13年4月、土砂災害防止法を制定しました。ちなみに関東の土砂災害危険箇所は東京、埼玉、茨城にそれぞれ約4,000、山梨に約5,000、群馬、栃木にそれぞれ約7,000、神奈川に約8,000、そして千葉県には、なんと約10,000近くもの土砂災害危険箇所があります(平成14年国交省資料)。また昨年度の土砂災害発生件数も、埼玉1、群馬2、山梨3、栃木4、茨城12、東京22、神奈川55、千葉61件で、千葉県は土砂災害の多い県です。
土砂災害防止法の制定を受け、全国の都道府県は土石流、急傾斜、地すべり等、土地の特性を分類し、土砂災害の恐れのある箇所を「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」に指定する作業を進めました。土地の改良等の対策は無論必要ですが、まずは地域住民に土砂災害危険箇所を周知しなければなりません。そして国は土砂災害防止法の制定から約10年が経過したのを踏まえ、平成22年から都道府県が土砂災害の警戒区域、特別警戒区域指定をしているかなどの、土砂災害防止対策の取り組み状況を調査しています。その調査報告から、千葉県の土砂災害防止対策がいかに遅れているかが分かります。
関東の各都道府県における土砂災害警戒区域等の指定状況ですが、東京、神奈川、栃木、山梨はほぼその作業を終えており、埼玉、茨城も半分以上は終えています。しかし千葉県は約10,000近くある土砂災害危険箇所のうち4分の1の約2,500しか指定がなされていません。しかも土石流、地すべりに対する基礎調査は、関東のみならず全国の都道府県で実施済み、もしくは実施中であるのに対し、千葉県では、それらの基礎調査は1箇所もなされていません。当然ながら土石流、地すべりでの指定は0で、急傾斜のみの指定です。また土砂災害対策のための予算である砂防関係予算が0という状況も続いています。
予算もつけず、基礎調査も遅々として進まない状況では、土砂災害防止法における次の段階、警戒避難体制の整備や一定の開発行為の制限に至ることはできません。また県はもちろん、県内各市町村が地域防災計画を策定する上で支障をきたすことになります。
74人もの尊い命が失われた広島市の土砂災害。千葉県でも対策を早急に立てなければなりません。
野田たけひこ