長崎に学ぶ

誰もがお世話になる医療、特に高齢社会ではその存在は切実なものになります。千葉県の医療を考える上で、私は長崎県に注目しています。

千葉県の総人口は約620万人で全国6位、長崎県は約144万人で全国27位。県内総生産は千葉県が19兆2,090億円で全国6位、長崎県は4兆3,201億円で全国29位。標準財政規模は千葉県が9,706億円で全国8位、長崎県は3,847億円で全国27位。財政力指数は千葉県が0.75で全国4位、長崎県は0.29で全国40位。ヒト、カネの分野において、千葉県は長崎県を大いに上回ります。

しかし、医療の分野においては、人口十万人当たりの医師数は長崎県が270.3人で全国6位、千葉県は164.3人で全国45位(下から3番目)。人口十万人当たりの看護師・準看護師数は長崎県が1,587.8人で全国3位、千葉県は710.8人で全国45位(下から3番目)。人口十万人当たりの病院病床数は長崎県が1,928.2床で全国4位、千葉県は915.8床で全国44位(下から4番目)。千葉県は長崎県に圧倒されます。

長崎県は御承知の通り、五島列島・壱岐島・対馬等、大小約600もの島々を抱える県で、そのため古くから離島・へき地医療に力を注いできました。長崎県も昭和20年代には離島への保健船による巡回診療、30年代にはへき地診療所の設置と大学病院などの協力による巡回診療の充実が図られたものの、地理的ハンディに加え乏しい医療資源と慢性的な医師不足で、満足できる医療の確保には程遠い状態でした。

昭和35年頃、長崎県衛生部は、離島の保健医療を本土並みに充実させるためにプロジェクトチームを設置し、離島の市町村が行ってきた病院や診療所の経営と、県が行ってきた保健医療対策を一体化させ、限りある医療資源や医療財政の有効活用により、良質の地域医療を展開するための「医療圏」構想を立ち上げました。また医療の向上には医師の確保が不可欠であるため、昭和45年より全国に先駆けて県独自の「医学修学金貸与制度」により医師の養成を行い、昭和47年からは「自治医科大学派遣制度」を創設し、毎年4~6名の医師を養成しています。県が主導的な役割を担い長崎大学や基礎自治体と連携し、努力してきた結果が千葉県との数字の違いとなって表れています。

超高齢社会を迎えるにあたり医療の充実は喫緊の課題です。千葉県も県が主導的な役割を担い、千葉大や基礎自治体との連携を強めること。県自ら医師・看護師等の医療現場に携わる人材の養成や確保に乗り出すこと。病院の設立に関する優遇制度や積極支援をすること。県立病院の更なる設置や県立医科大の設立を視野に入れること。等々を早急に実施すべきと考えます。

江戸時代、オランダ医学を学ぶため、全国から多くの人たちが長崎に集いました。時代は変わっても、長崎に学ぶことはたくさんあります。

野田たけひこ