昨年2018年、日本で生まれた子どもは約91.8万人(統計のある1899年以降で最も少ない出生者数)で、亡くなった人は約136.4万人(1945年以降で最も多い死亡者数)でした。昨年の1年間に日本は約44.4万人の人口が減少しましたが、これは1日当たりしますと約1,200人、つまり毎日約1,200人の日本人が消えていたことになります。そして、団塊の世代(1947年から1949年に生まれた人たち)が80歳台に達する2030年以降には、一気に死亡者数が増え出し、日本の人口は加速度的に減ることになります。
現在、最も子どもを生んでいるのは30〜34歳の女性ですが、2015年の国勢調査で30歳の女性の数は約69万人、10年後の2025年に30歳になる女性(2015年時点で20歳)は約59万人で約10万人の減少、その10年後の2035年に30歳になる女性(2015年時点で10歳)は約52万人で2015年時点の約69万人から約17万人の減少となります。少子化の影響で、将来的に、いずれ母親になるであろう女性の数が減り、また過去に遡って子どもの数を増やすことはできない以上、一人の女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)が多少上がったとしても、残念ながら、この「静かな有事」ともいわれる人口減少の流れを止めることはできません。ちなみに、昨年2018年の合計特殊出生率は1.42人で、これは一世代ごとに3割ずつ人口が減っていく数値であるとされています。
なぜ、少子化の流れができてしまったのでしょうか。その一因として1991年にバブル経済が崩壊し、企業は生き残りをかけ、人件費を削ろうと新規採用を抑え、非正規雇用者を多用したことが挙げられます。それによる就職氷河期の影響をもろに受けたのが、最も若い人口の多い世代だった第2次ベビーブームの団塊ジュニア世代(1971年~1974年に生まれ)やポスト団塊ジュニア世代(1973年~1980年に生まれ)の現在40歳代の人たちでした。若者が安定した仕事につけなければ、当然ながら結婚や出産も難しいものになります。
アベノミクスのトリクルダウン理論によって景気は好転しているといわれています。確かに企業の内部留保は6年連続で過去最高を更新し、今や約446兆円となっています。しかしそれはほとんどが大企業で、中小企業にまでは流れ落ちてはいません。したがって、富は中間層や低所得者層に向かって流れず富裕層に蓄積し、貧富の格差は拡大することになります。また、非正規雇用も全雇用の約4割に達しようとしています。その非正規雇用の人たちの約5割が貯蓄ゼロという状況です。
私は、若者が結婚や出産に経済的な不安を持たず、消費活動も活発にしなければ、日本の行く末は厳しいものになるのではと危惧しています。
令和元年8月5日 野田たけひこ
*トリクルダウン理論・・・富裕層や大企業を優遇する政策をとって経済活動を活性化させれば、富が低所得者層に向かって流れ落ち、国民全体の利益になるという理論