我が国では、年間約643万トンもの食品が食べられることなく捨てられており、それは2017年に国連世界食糧計画(WFP)の※食料援助量約390万トンの1・6倍に相当します。
先週の「県政改革」で触れましたが、この「食品ロス」の問題については、国も「食品ロス削減国民運動」を進めており、昨年の10月1日からは「食品ロスの削減に関する法律」が施行されました。千葉県においても「ちば食べきりエコスタイル(ちば食べエコ)」という運動を展開し、「食べきれる量の注文、購入、調理等」を心がけて頂くよう、県民(消費者)に呼びかけています。
また事業者に対しては、「小盛りメニューの導入」や宴会等における食べきりの呼びかけなど、食べきりの促進に向けて推進し、その取組を実践する事業者を「ちば食べきりエコスタイル協力事業者」として登録するなど、広く県民等へ周知することにより、食べきりの推進に向けた意識啓発を図っています。
しかしながら現在、協力事業者登録をしているのは県全体で、わずか54事業者(チェーン店も含む)で、そのうち食べきれないものを持ち帰ることに対応してくれる事業者は19事業者のみです。
私は先週の「県政改革」で、食品の持ち帰り用ボックスである「ドギーバッグ 」を「自己責任カード」と共に携行することを提唱しましたが、飲食店が廃業につながりかねない食中毒のリスクを負ってまで、食べきれないものを持ち帰ることに対応するのは、容易なことではないでしょう。「持ち帰り」に対応してくれる事業者を増やすには、「持ち帰り」によって食中毒が発生した際の、県の事業者への強力なバックアップ体制が必要であると私は考えています。
また名古屋市環境局の調査によれば、外食時の食べ残しの持ち帰りについて、「持ち帰れるかお店に確認する」45%、「持ち帰りたいがお店に言い出せない」24%、「持ち帰りたいとは思わない」15%、「多くのお店が持ち帰れないため諦めている」13%という結果でした。調査対象が「環境デーなごや2016」の来場者で比較的環境問題に関心の高い層であるにもかかわらず、半分以上の人が「持ち帰り」を遠慮しているという現状もある一方、2010年にドギーバッグ普及委員会が実施した調査では、ドギーバッグに賛成かどうかを聞くと、99.6%が賛成と回答しています。
日本列島は、南北に長く、四季が明確多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。このような、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を、「和食:日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
また、キャベツやブロッコリーの芯・カブの葉や茎の漬物、酒を造る時にできる副産物の酒粕で作る粕漬け、豆腐を造る時にできるおからで作る卯の花和え、ウナギの骨のから揚げ、鶏の軟骨を食べられるように加工するつくね等々「和食」は本来、食材を余すことなく使う持続可能な食文化です。さらに、日本人には慶事などの際に出された食事を「折り」に詰めて持ち帰り、それを家庭で味わうという習慣もあります。「持ち帰り」等の食品ロス削減の取り組みは、日本人の食文化を再確認することでもあります。
令和2年2月16日 野田たけひこ
※食料援助量・・・発展途上国の食糧不足緩和のため,国際小麦協定中の食糧援助規約に基づいて
行なわれる援助の量。