庶民が白米を口にできるようになったのは、約150年前の明治時代に入ってからといわれています。それ以前、庶民の主食はアワ・ヒエ・キビなどの雑穀でした。
米の増産は永らく、我が国の最重要政策と位置付けられ、我々日本人が白米を主食として食べることは、まさに我が民族の悲願でもありました。
米が余るようになり、国が米政策を大転換して減反政策を始めたのは55年前の1970年ですから、これは我が国の米づくりの永い歴史からみれば、ごく最近の出来事にすぎません。
また米づくりは、種まきから収穫、脱穀に至るまで、季節や天候に対応しなければならない、非常に手間のかかる緻密な作業の連続です。日本人は古くから、家族や村人が総出で協力し合いながら、米づくりに取り組んできました。
こうした長年にわたる労力と工夫が、細部にまで気を配る勤勉さや真面目さなどの美徳、そして個人の利益よりも集団の調和を重んじ、協力して目標を達成する「和の精神」を培ってきました。そのようなことからも、米づくりは我が国の根本に関わる極めて重要な問題であるといえます。
さて、令和6年3月、米の卸業者でつくる全国米穀販売事業共済協同組合は、株式会社日本総合研究所(日本総研)の協力を得て「米穀流通2040ビジョン」を公表しました。
この中で示された現実的なシナリオによると、2040年には、全国の米の生産量は2020年の約636・6万トンから約41%減少し、357・2万トンまで落ち込むと予測されています。また、米の生産者数も2020年の約85万人から約65%減少し、約30万人まで激減すると予想しています。
このシナリオの通りに推移すれば、4年先の2030年代には国内の米需要量を国産米だけでは賄いきれなくなる可能性があるとされています。
一方、世界の人口は約82億人ですが、24年後の2050年には約97億人に増加すると予想されています。内閣府も、「世界的な人口増加により、2050年には穀物の需要量が現行の約1.7倍に達すると予想され、食糧需給の逼迫が必至の状況にある」との認識を示しています。
そして、世界の多くの国々では、近い将来に必ず訪れる食糧不足による、食糧の争奪戦に備え、穀物を自国の安全保障に関わる重要な戦略物資と位置づけ、農業に多額の補助金を投じて穀物の増産に努めています。
近い将来、地球規模で食糧の争奪戦が起きたとき、果たして我が国は、国民の需要に見合った量の米を海外からの輸入によって十分に確保できるのでしょうか。
米を守ることは、日本の食卓を守ることです。そしてそれは、次の世代の安心と暮らしを守ることにもつながっているのです。日本人の主食である米は、食糧安全保障の観点からも国内での増産を図るべきです。
食料安全保障・・・良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態をいう。
