OECD(経済協力開発機構)加盟34ヶ国(いわゆる先進国)の半数近くの国では大学を卒業するまで授業料は無料です。日本では民主党政権下で高校の授業料は無償化されましたが、大学や専門学校に進学するには多額のお金がかかります。昭和50年の国立大学の授業料は3万6,000円、私立は18万2,677円だったものが、平成25年には国立53万5,800円、私立は86万72円へとそれぞれ高騰しています。そして日本の大学の授業料の高さはOECD加盟国の中でもトップクラスの高さです。
平成4年の高校新卒者求人は167.6万人でしたが、平成23年では19.5万人へと大幅に減っています。高卒で就職できる割合は平成2年には35%でしたが、20年後の平成22年には17%にまで落ち、東京では何と7%しか就職できません。若者は働くためには、好むか好まざるかにかかわらず、大学や専門学校などに進学しなければなりません。しかし先程述べました通り大学に行くにはお金がかかります。今、6人に1人の子どもが貧困線以下(年収122万円以下)の家庭環境にあるといわれています。貧困線以下の家庭の子どもは、どんなに勉強ができても、どんなに学びたいという気持ちがあっても、進学をあきらめざるを得ないという現実があります。
奨学金があるじゃないかと思われるでしょう。ところがOECD加盟34ヶ国のうち32ヶ国の奨学金は、国などからお金の支給を受ける給付型の奨学金制度なのに対し、日本とアイスランドの2か国のみが、国など(日本学生支援機構など)からお金を借りるという貸与型の奨学金制度です。ただし、アイスランドは大学を卒業するまで授業料は無料ですので、OECD加盟34ヶ国の中で、大学に進学するのに一番厳しい環境にあるのは、日本であるといえましょう。そして、この日本の奨学金制度の代表的なところ、日本学生支援機構(かつての日本育英会)で第二種奨学金を月々10万円借りたならば、現在の年利0.82%で考えますと、月々2万1,771円を20年かけて、現役就職であるならば43歳まで払うことになります。
お金を借りたら返すのは当然だと思われるでしょう。ところが奨学金を3ヶ月以上滞納した人の80%以上が年収300万円以下で、その内約46%が派遣社員やアルバイトなどの非正規雇用か無職です。また滞納していなくても57%が年収300万円以下の人たちです。今、非正規雇用が全雇用の約4割近くになり、実質賃金もマイナスという状況下で、奨学金を返すというのは貧しい若者にとっては相当にきついことでしょう。
奨学金の延滞者への対応もいかがなものでしょうか。3ヶ月以上滞納すると、その情報は個人信用機関に送られ、カード使用もできなくなる。延滞金は年5%で延滞後の返還金は、まず延滞金返済にあてられるので延滞金が増えると、いつまでたっても元金返済ができず、一生、奨学金返済に追われるというケースもあります。
次世代の生活の充実なくして、現役世代の老後の充実は成り立ちません。そのように考えれば奨学金制度の改革など、次世代への教育環境の整備は、現役世代の医療、介護とも密接に結びついています。奨学金制度の改革は必要です。