国立がんセンターによりますと、わが国では1年間におよそ5万3千人の女性が乳がんと診断され、また40歳から50歳の乳がん発生率は、この20年間で約2倍に増加しているとのことです。
がんサバイバーシップという言葉がありますが、これは、がんの診断を受けた方々(がんサバイバー)がその後の生活で抱える身体的・心理的・社会的な様々な課題を、社会全体が協力して乗り越えていくという考え方です。
そして、多くの女性が乳がんとの診断を受け、がんサバイバーとして、まさに様々な課題に直面しています。たとえば乳がんによって乳房を全部摘出しなければならなかった女性の、病への恐怖、心の不安、体の苦痛、気持ちの葛藤、さらに乳房を失う悲しみはいかばかりでしょうか。また「髪は女性の命」という言葉もありますが、抗がん剤の影響によって髪が抜け落ちてしまった女性の悲しみも、男性にはわかり得ないものなのでしょう。
若くして乳がんを発症し、乳房を全部摘出し、また抗がん剤の影響により髪が抜けてしまった女性のブログには「人目を気にせず温泉に入りたい。かわいい水着を着たい。人目を気にせず買い物を楽しみたい」との書き込みがありました。やはり若くして乳がんを発症した別の女性のブログには「メイクやおしゃれを楽しむことは、がん患者であることを隠すためではなく、なりたい自分になることであり、それは、がん治療中の生きる糧にもなる」との書き込みがありました。
行政はそのような、がんサバイバーの思いに応えることができるのでしょうか。鳥取県や秋田県などでは、ささやかなものですが、そのようながんサバイバーの思いに応えようとしています。秋田県では昨年より、がん治療と就労や社会参画の両立、購入に伴う経済的負担の軽減を図ることを目的として、がんの治療に伴い医療用補正具を使用する方に対して、購入費用の一部を助成する「がん患者医療用補正具助成事業」を立ち上げました。そして、その事業では、装着型の人工乳房や医療用ウィッグの購入の際に、補助金が出ます。また秋田県内の多くの市町村でも、県の動きに呼応して同様の事業を立ち上げています。鳥取県でも同様の補助金制度があります。
千葉県でも「がん患者医療用補正具助成事業」を立ち上げ、がんサバイバーの思いに応えるべきではないでしょうか。今月15日から定例の県議会が始まりますが、今回、本会議に登壇する機会を頂きました。そして私は、そこで「がん患者医療用補正具助成事業」の立ち上げを提唱します。
平成30年2月12日 野田たけひこ