米国の経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が5月15日に「この日本の地域にはコロナウイルスがありません」という見出しで、岩手県が新型コロナウイルス感染者0人であることを「100万人以上の1つの地域が無傷で残っています」と、驚きをもって報道しました。
さて岩手県の人口は約122,9万人で、千葉県の人口約627,8万人よりはるかに少なく、また千葉県は首都圏に位置し、空の玄関である成田空港を抱える等、人口や人口密度、地理的要因等、様々な違いがあるので単純に論じることはできませんが、7月1日現在、千葉県の新型コロナウイルス感染者総数が970例であるのに対し、岩手県は今もって感染者0であり続けています。
岩手県の達増拓也知事は、東日本大震災において、県の地域防災計画に基づく感染症対策が県や県内市町村のみでは事実上困難な状況となったため、DMAT(災害派遣医療チーム)等を参考に岩手医科大学及び県立病院の感染制御の専門家のアドバイスを受け、ICAT—感染制御支援チーム—(Infection Control Assistance Team)を震災直後に創設し、避難所の巡回・監視、サーベイランス(感染症発生動向調査)の実施、感染症発生予防、拡大防止等を長期にわたり措置しました。ICATは震災以降の平成28年の台風10号、昨年の台風19号の際にも、感染症対策に奔走してきました。またICATは現在も県内市町村に感染症予防の指導をし、高齢者や障がい者施設でも感染症防止のアドバイスをしています。また、青森県の施設内感染対策の応援に行く等の活躍もしています。
さらに、今年の2月18日に達増拓也知事を本部長とし、県組織の幹部のみならず、県医師会、岩手医科大学をはじめとする医療関係団体の代表、保健所の代表、県の検査センター等、現場の専門家も構成員とする「岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置しました。達増知事の現場重視の考え方が、その組織構成に色濃く現れています。また、東日本大震災の、切羽詰まった状況の中でも、感染症対策のことを考えていたという経験や、平時から住民に感染症予防指導をしてきたので、岩手県民全体の感染症に対する意識が高かったことが感染者0であり続けていることの要因だと思います。
千葉県では今年の1月23日に「千葉県健康危機管理対策本部」にて、新型コロナウイルス感染症対策が話し合われており、国が「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置したのを受け、3月26日に「千葉県新型コロナウイルス感染症対策本部」と名称変更し、現在も県内における感染症対策を担っています。そして千葉県の対策本部は森田健作知事を本部長に県組織の幹部によって構成されています。千葉県も岩手県から多くのことを学ぶべきだと思います。
私は千葉県においても感染症対策本部の人員構成の見直しと、ICAT—感染制御支援チーム—創設を提唱します。
令和2年7月5日 野田たけひこ